キレイになるをキッカケに鍼灸を受ける人口を増やすノウハウ、
ありがとうであふれた結果、売上が上がった治療院の経営のポイントを学び、
明日から自分の院の集客、治療に使える方法を学ぶセミナー。
講師は(財)日本美容鍼灸マッサージ協会、認定美容鍼灸師となり、
ハリウッドスタイル上田式美容鍼灸を提供する道内の鍼灸師、そして創始者、上田 隆勇。
あなたに道内での成功ノウハウを公開。
それはちょうど3杯目のビールを飲み干したところだった。その日は、鍼灸師どうしが集まって行う勉強会の打ち上げ。
5〜6人があつまり、いつもの居酒屋で呑んでいた。
いつもの通り、「あの先生の腕はすごい」とか
「あの症状の場合は、足じゃなくて手のツボを…」
など治療の話で盛り上がっている。
その一方僕は、今日この場であることをみんなに伝えなければならなかった。ひとしきり治療の話で盛り上がった所で、
僕は静かに話し始めた。
「こんな時に何だけど…」
「実は俺、横浜に美容鍼を勉強しに行こうと思うんだ」
「なんだって、流行りにのってテレビにでも出るつもりか?」
仲間の鍼灸師が面白半分で聞いてきた。
「流行にのるんじゃない」
「しっかりとした理論と技術を身に付けて、北海道でも1万円以上の高単価で治療できることを証明したいんだ」と僕は答えた。
一瞬場が静まり返った後、今度は嘲笑とため息の混ざったざわめきが起こった。
「あいつは本気で言っているのか?」
と驚きの声と同時に、コソコソと話す声も聞こえた。
「札幌の平均施術単価が3000円だっていうのに、1万円の施術でお客さんが来るわけがない」
「万が一来たとしても、1万円じゃ続けて通ってはくれないよ」
「バカなやつだな、せっかく今のままでもうまくいっているのに、わざわざ鍼灸院を潰すつもりか」
「もうどこの治療院だって美容のメニューくらいあるよ」
「今さら、美容鍼なんて勉強しても遅いよ」
彼らは僕が絶対に失敗するだろうと思っているようだ…
「なんだか俺を話す時によく、「鍼灸師はせっかく素晴らしい技術や知識があるのに、
それを伝えるのがヘタだからダメなんだ」とか「もっと鍼灸師の地位を向上させたい」
「もっとマーケティングの勉強をして、いいものは世の中に広めていかなきゃダメだ」
なんて意味の分からないことを言っていたよ」
「単純にお金に目がくらんだじゃないか」
「いっちゃ悪いが、鍼灸師としてお客さんを想いやる気持ちを忘れちまったんだよ」
と同僚は、みんなに聞こえるように言い放った。
「あいつは専門学校から一緒だが、いつも俺の方が成績はよかったし、
それに鍼灸院を開業してからも俺よりも売上をあげたことないしな」
「それに、いつも机に向かって鍼灸の勉強でもしているのかと思ったら、
チラシを作ったり、Facebookをやったりしてるし…逆に気味が悪いよ」
「まぁ、温かい目で見送ってやろうぜ」
「負けるのが分かっていながら戦いを挑む」
「ある意味勇敢じゃないか」
どうせ励ましてはくれないだろうと思っていた。
僕は財布を取り出し、あえて1万円札をテーブルの上に置いて、そっと席を立った。
ここで何を言ってもムダだと思ったからだ。
席を立ち、店を出ようとした僕の背中から
「おいおい、これは一体何のマネだ?」
という声がした。
「いいじゃなか!」
「最後くらい好きにさせてやれよ」
と同調する声があり、
一同笑いの渦に巻き込まれた。